顎関節症は、顎がカクカクと鳴る、口が開かなくなる、顎を動かしたときの痛みや音がひどく気になる、といった症状の総称です。
「顎関節」は頭蓋骨と下顎をつないでいる部分のことを指します。下顎は、左右の耳の穴の前からブランコのように頭蓋骨にぶら下がっているのです。この関節に何らかダメージがあることを「顎関節症」といいます。ダメージを受けた部位によって4つに分類されます。
I型 | 顎の筋肉に障害がある | 咀嚼筋が痛いタイプ |
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II型 | 顎関節そのものが痛む | 噛み締めると痛いタイプ |
III型 | 関節円板の位置がおかしい | 口の開閉時に音がするタイプ |
IV型 | 骨が変形している | 慢性的に症状あり 動かすとギリギリと雑音 |
顎関節症は、生活習慣や癖によって引き起こされます。顎関節や周辺の筋肉に、長い時間慢性的に力が加わることで問題が発生していることがほとんどです。また、無意識に行っている癖や噛み合わせ、姿勢といった複数の要因が関係しあっていることが多く、これらすべてを紐解いてから治療を行う必要があります。
こんな癖や身体の特徴、ありませんか?
これらひとつひとつが、すべて顎関節症の原因になるわけではありませんが、無意識に長時間続けているのなら注意が必要です。
歯ぎしりは無意識に行っている癖のひとつです。朝、目覚めたら顎の周りが痛い、頭痛がする、気付いたら歯をくいしばっていた……。こんな経験があると、歯ぎしりをしている可能性が高いと考えられます。
歯ぎしりはさまざまな身体の不調を招きます。
・歯の噛み合う箇所(歯の表面)を削ってしまうことから、知覚過敏を引き起こす原因になる
・噛み合わせを乱し、肩こり・頭痛・腰痛などにも影響を及ぼす
・重症な場合は、歯がグラグラしてきたり、歯や歯ぐきに痛みを感じたりする
歯ぎしりによって起こる症状は、顎関節症だけではなく、さまざまな悪影響を引き起こすのです。
なお、歯ぎしりの原因には、過度のストレスが影響していると考えられます。ストレスや緊張が、歯への圧力という形で歯ぎしりを引き起こしてしまうのです。
人の噛む力は思っているよりも強いもの。1日に何度か意識的にリラックスしてみることで、歯ぎしりが改善されることもあります。ちょっと一息、試してみてはいかがでしょうか?
顎関節症の治療法には、主に3つあります。これらの療法は、先の症状で類型化された4つのタイプ(I~IV型)に対してそれぞれ適応されます。
療法 | 適応される 症状別タイプ |
治療内容 |
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薬物療法 | I型・II型 | 消炎鎮痛剤や筋弛緩薬を服用 |
II型 | もしくは湿布・塗り薬を使用 | |
運動療法 | III型 | ズレてしまった関節円板を元の位置に戻す運動 1日5~10分 数回を、1ヶ月継続 |
IV型 | 関節円板がズレたままの位置で正常な運動を回復させる 1日5~10分 数回を、1ヶ月継続 |
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スプリント療法 | I・II・III・IV型 すべて |
歯列を覆う装置「スプリント」を就寝時に装着 夜間に2~3ヶ月使用 |
噛み合わせは身体のバランスにも深く関係していると考えられています。人の口腔内のちょっとしたバランスの乱れが、身体のバランスへ影響するのです。
当院では、治療にあたって噛み合わせの改善のために、できる限りのことを行います。歯のクリーニングをかねた定期健診で噛み合わせの問題がわかり、それを改善することでしつこい頭痛から開放された、といった方もいらっしゃいました。
どうにも治まらない身体の不調がありましたら、噛み合わせの乱れを疑ってみてもいいかもしれません。